「今よりも良くなるという予感」があるからこそつらい治療に耐えられる

 

なぜ患者がつらい治療に耐えられるのかというと、「今よりも良くなるという予感」があるからです。「予感などというあやふやなものに頼るのはおかしい」という意見もあるかもしれませんが、人というのは多かれ少なかれあやふやなものに頼って生きています。むしろ、あやふやなものだからこそ頼ることができるのです。

 

人が幸せを感じるときというのは、「明るい兆しを実感した瞬間」に他なりません。「今日よりも良い明日が訪れるという期待」を抱いているからこそ、人は前向きに生きることができるのです。もしも「今日よりも悪い明日が訪れるという確信」を抱いていた場合、前向きに生きることなど到底できません。世の中広しといえども、「右肩上がりの人生」よりも「右肩下がりの人生」を好む人はほとんどいないでしょう。

 

あらゆる物事には二面性があります。たとえば、がんになったら気分が大きく落ち込むのが普通です。しかしながら、気分が落ち込むのは生きているからこそです。もし生きていなければ、気分が落ち込むことすらできません。「がんになったけれど、生きている」という事実をどのように捉えるかによって、人生の色彩は大きく変わってきます。

 

もちろん、がんなどの重篤な病気(命を落とす可能性が高い病気)にならないに越したことはありません。ですが、どんなに健康的な生活を送っていたとしても、重篤な病気になるときはなります。そして、重篤な病気の大半は、簡単には治りません。簡単には治らないということは、病気との付き合いが長期間に及ぶ可能性が高いということです。

 

重篤な病気になると、人生の自由度は確実に狭まります。ですが、自由度が狭まるということは、「余計な選択肢」に目が向かなくなるということです。「自分が本当に必要としている選択肢」に注力すれば、前向きに生きられる可能性は確実に高まります。どん底の状態に陥ったとしても、何らかの希望を見出すことができれば、幸福感を得ることができるのです。重篤な病気というのは、「人生を捉えなおす重大な契機」であるといえます。